ボンネット
仕事柄、夜遅くなることが多いのだが、
その日の帰りは、車を運転することが、
なぜか嫌だった。
しかし、車を運転しないと深夜の寂しい山道を歩いて帰るわけにはいかなかった。

帰り道に、一つだけある信号機が赤だった。
何気に信号待ちをしていると、
信号の向こう側に大型ダンプが止まった。
遠くから、バイクの音がして、こちらに近づいてくるようだ。

信号が変わり、私はアクセルを踏もうとした、その瞬間、
すれ違おうとしていた大型ダンプにバイクが激突したのだ。

と、私の車のボンネットに何かが、ドン!と落ちてきた。
それに目をやると、私は血の気を失って、釘付けになってしまった。
そう、それはダンプと激突したオートバイを運転していた人の、ヘルメットごと
引きちぎれた首だった。
私は眼をそらすことを忘れ、開いたバイザーの中で私を見つめるライダーの
眼を見続けていた。

「見るな!」

そう言われて、私はハッと我に返った。
そう、その首が私をにらみながら、口を開いたのだ。
あわてて車を飛び出した時、救急車とパトカーが到着した。
死体の片付けをすませたあと、私は家へと戻った。

私は眠れなかった。

それからだ、私が深夜に車を運転していると
必ず、ボンネットにあのときのライダーの首が
乗ってきて、私に話しかけるのだ。

「ドライブに行こう・・・道連れにしてやるよ」