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ノック |
これは20年以上前、 まだ私が10代前半の頃の話だ。 10歳でバンドを始めた。 担当はベースだった。 私の部屋は生家の2階西側にあった。 入口が北側で、窓は西側と南側の2箇所。 ある夏の深夜、南側の窓のすぐ前で私は自分のベースを改造していた。蒸し暑かったが、窓を閉めきって作業をしていた。夜中は結構、音が隣近所に響くのだ。あと少しで、改造が終わる。 と、その時、 私の部屋の南側の窓をノックする音がした。 すぐ目の前で。 「トントン」 「?」 「トントン」 「誰?」 私は窓を開けてみた。 誰もいない。 窓から顔を出し、あたりを見回してみるが、 辺りに人影はない。ましてやここは一戸建ての2階である。 電気もこうこうと点いている。空き巣などでは無いことは確かだ。 「なんだ、気のせいか。夜中だからビビッてんのかな?」 などと思いながら、急いでベースの改造に再度とりかかる。 なにせ、明日はLIVEの日である。 途中で音が出なくなったりすると、とんだ赤っ恥をかくことになる。 それから、15分もたっただろうか。 窓の外にスゥ~と、影が映ったと思った途端、 また 「トントン」 「トントン」 顔から血の気がひいていくのが自分でもはっきりとわかった。 夢中で手に持っていたドライバーで窓のカギを閉め、 こちらからも、ノックを返した。 「トントン」 すると、また向こうもノックを返してきた。 「トントン」 しかも、そのノックの音はだんだんと大きくなってきた。 「ドンドン」 「ドンドン」 何度も何度もノックを、いやもうノックと呼べる音ではなかった。 「ドンドンドンドン」 窓ガラスが割れるかと思った。 隣には兄が寝ているはずである。この音に何も言わないのは、明らかにおかしい。恐怖に震えながら、ゆっくりと自分の部屋のドアを開けた。まだ、窓を叩く音が続いている。ゆっくりと兄の部屋のドアを開けた。幸い兄はまだ起きていた。私の顔を見るなり「大丈夫か?まっ青な顔をして」と言ったので、今の出来事を口早に話し、その場に倒れこんでしまった。そのまま、気絶したのだろう。翌朝、私は兄のベッドで目が覚めた。 兄が声をかけてくた。 「大丈夫か?あれから、お前の部屋へ行ったが、そんな音はしていなかったぞ」 「あれだけ、大きな音がしていたのに、聞こえなかったはずがない」 「いや、俺には聞こえなかったし、お前の部屋には何もなかった」 「信用してくれないなら、もういい」 私は起き上がり、昨日やり残した改造を急いで片付けて、 LIVE HOUSEに向かった。 その日の深夜、帰宅した私を待っていた母はこう言った。 「昨日の話を聞いたよ。T兄さんと今日、霊能者の××先生の処へ行ってきたから」 「へぇ、どうせあんたも本気にしてないんだろ、気休めで霊能者の処へ行っても…」 「まぁ、聞きなさい。あんたが外に出てからT兄さんから話しを聞いたのよ、その話が終わった途端、電話が鳴ってね、××先生から。それも、あんたの身の回りに変なものが憑こうとしていた霊夢を、昨夜見たって」 「それで?」 「あんた、2回目に窓を叩かれた時には、開けなかったんでしょ?」 「あぁ、もうそれどころじゃなかったしね」 「あ~っ、よかった」 「なんで?」 「2回目の時、もしもあんたが窓を開けていれば、その霊に取り憑かれてたって」 「なんの霊だって?」 「狗のような、動物霊だって」 「じゃぁ、俺は助かったの?」 「まだ、油断できないらしいけど、今の所はね」 「じゃぁこれから先もまた同じような事があるかもしれないって事?」 「そう、それが今日かもしれないし、何年後かもしれないって」 「そうなった時は、どうすればいいって?」 「窓さえ開けなければ大丈夫ですって」 「この夏の暑い最中に、窓を閉めろってか?クーラーもない部屋で」 「仕方ないじゃない、我慢しなさい。夜12時から朝の8時までで良いらしいから」 「わかったよ」 それから、20年以上その動物霊は、現れていないようだ。 いや、もしかしたらもう私に憑いているのかもしれない。 何故ならば、それ以来、原因不明の病気に悩まさ れている。 それだけではない、結婚生活もすれ違いが多く、お互いを誤解する事があったり、(離婚しないのが不思議なくらいの誤解が数え切れないくらいある)仕事でも、何ものかに足を引っ張られているように、本当に上手くまわらないと感じることが多々あるのだ。 あなたの部屋の窓は大丈夫ですか? 真夜中のノック。 |