生まれ変わり2 2003/02/17UP

父が亡くなってしばらくたつと、ようやく頭も心も、
その事を受け入れられるようになった。

そのころから、身近に不思議なことが起こるようになる。
近親者を亡くした人に聞いてみたら、
同じことを体験していて、不思議だったものだ。

大したことではない。

ある日、それに気づく。
夜、一人で部屋にいるときなど、壁に小さなクモや、ハエがいる。
別に不思議ではない、いつもの風景だ。
ふとした拍子にその小さな生き物をびっくりさせてしまい、
姿が見えなくなる。
ちょっと悪かったな、と思う。驚かすつもりはなかったんだよ。
新聞など読んでいて、ふと壁に目をやると、さっきのクモだ。
おや、戻ってきたのかい?
今度はおどかさないよ。
クモはえさでも探しに行ったか、見えなくなる。
でも、また戻ってくる。

その時、ふと声をかけてみる。
初めは心の中でおそるおそる・・・次に小声で。
「もしかして、お父さん?」
「来たの?」と声をかける。

何の根拠もない。
だいたい、なんでクモやハエなんだ。
頭ではそう思うのに、懐かしさと喜びが胸に迫る。
「心配させたかなぁ?大丈夫だよ、元気だから。」
クモに話しかける。
クモはじっと動かず、私が話し終わると、どこかへ消えていった。

誰かに見守られている、それはきっとこんな感覚だ。
困った時、父に「助けて」とは言わないが、
遠くから見守って欲しいと言う願いは、きっと叶えられたのに違いない。