街を歩けば 2005/02/11UP

子供が生まれてからは、なかなか時間が取れないでいるが
私の好きなことは散歩である。

河からの風を感じながら、また原っぱの花を眺めながら歩くのは楽しい。
ただ、河は地面に隠れる事が多くなり、原っぱも年々宅地へと変わっていくので
最近は街中を歩く。
古い街がいい。
瓦屋根からペンペン草が生えていたり、秘密めいた路地があったり、日なたぼっこする猫にも会える。

学生時代は古本屋巡りをしていた。
探している本があって回っていたのだが、まもなく古本屋を見つけることに夢中になった。
電話帳に載っていない店も多くて、路地に「古本買い取ります」の看板を見つけると嬉しくなった。
身体を横にしてようやく通り抜けられる程の戸を開けると、古い本特有の香りがする店内。
学生街の店は整然と学術書が並び、眼光鋭い店主が鎮座していた。
何年前に拭いたかというようなガラス戸を開けた路地の店には、遭難しそうな本の山。
置き場所がなくて二重に詰め込まれた本棚の前にも、見えなくなるほど本が積まれ
「下から本を引き抜かないでください」とか、「奥の本を出さないでください」の注意書きが貼ってある。
(じゃあ、どうやって本を探すんだよ。)
こういう店には掘り出し物(ほんとに掘り出してる)も多いので、行きたくなる。
松下竜一さんのサイン本も、奥から見つけたし。

部数の少ない出版社の物や自費出版は、古本屋でしか探せない物も多い。
どんな人の蔵書だったのかを想像するのも楽しい。

あてもなく散歩する時、次に楽しみなのはパン屋を見つけること。
わりに探しやすいのは、パンの香りが漂ってくるから。
食べたばかりでも、ついふらふらと寄ってしまう。
新商品の開発に熱心な店には、首をひねりたくなるパンもある。
「きんぴらパン」や「くるみパン」は、20年ほど前ある店で見つけた。今では、けっこう定番商品だ。

貧乏時代を支えてくれた「パンの耳」も、そうやって見つけた。
無料で置いてあると、天に感謝した。
サンドイッチを作る店のには分厚く切られた食パンの片側があって、客は先を争って買っていく。
両手で抱えるほどの大きさで50円。
「ライ麦パン」や「黒糖パン」、時には「天然発酵パン」の耳まであるのだ。
なんと豪勢な食事か。

散歩の楽しみという、ちょっと高尚な話を書くつもりがなんとしたこと。
いやはや、私は食欲が勝っているということか。
小腹も空いてきたしコーヒーでも作って、昨日寄った店のラスクなどつまむ事にしよう。