Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第13夜」

不思議?

 波の音が眠りを誘うような、暖かい朝です。
「春って、毎日どんどん変わっていくのね。
昨日より、草が緑色になってきたみたい。」
Uちゃんは波打ちぎわを歩きながら、アリさん、イモムシさんと話をしていました。

 「そうだね。」
「僕はそれより、昨日話していた不思議な湖のことが気になるよ。」
「あっ、アリさんも?僕も昨日考えてて眠れなかった。
Uちゃん、どんなところだと思う?」
「わかんない。でも、とっても不思議なことが起こるのよ、きっと」
「不思議ってどんな?」
「きっと、わくわくする冒険よ!」
「それじゃ、わかんな〜い!」

 こちらでは、カワウソさんと新入りのアザラシ君が、カバさんの背中の上で話していますよ。
「僕は、川育ちだから、海の水は苦手だな。
苦くて塩辛いし、さっき泳いでみたら、やたらに身体がひりひりするんだ。」
「川の水の方が、ひどいよ。土っぽいし、僕の大好きな魚はいないしさ。」
「あはは。海と川、それだけ違うって事だよね。
その違う物が混ざり合うっていう、不思議な湖。
こりゃ、ますますどんなところか、見たくなってきたじゃないか。」
「そうだね、カバさん。」

 春らしいおだやかな一日でした。みんなはたくさん歩きました。
夕方になると、いつものように集まって寝床を決めました。
カモメさんも降りてきましたので、
「不思議ってどんなこと?」と、みんなが聞きます。
「僕も他の鳥から聞いただけで、知らないんだよ。残念だけど。」
わからなくてちょっとがっかりしましたが、
こうして「不思議」は、みんなの心の中でどんどんふくらんでいったのです。