Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第14夜」
「あこがれ」

 また、朝からいいお天気です。
昨日ずいぶん歩いたので、
山が近くに見えてきました。

 「ねぇ、湖は山の向こうにあるの?」
空を飛んでいたカモメさんは、Uちゃんの肩まで降りてきました。
「じゃ、見てきてあげよう。ちょっと待ってて。」
すいっと飛び立つと、あっという間に青い空の中に浮かぶ白い点になりました。

 「早いなあ。もうあんなに小さくなっちゃったよ。
もしも飛んでいけたら、湖まですぐなのに。」
「Uちゃんは、鳥じゃないから。
飛ぶことは、鳥にまかせるんだよ。」
カワウソさんはそう言って、先へ歩いていきましたが、
Uちゃんは、カモメさんが飛んでいった空をずっと見ていました。

 「おまちどおさま。」
しばらくして戻ってきたカモメさんは、
山のふもとを越してしばらく行くと、湖につながる川があることを
教えてくれました。

 「いいな、飛べて。Uちゃんも鳥になりたいなあ。」
「そう思うかい?」
「だって、足で歩くよりずっと早いし。空を飛べるって、気持ちいいでしょ。」
「僕にとって、飛ぶっていうのは当たり前のことだから。
でもね、君が考えるほど、楽なことではないんだよ。
たとえばツバメやツルは、他の国から休みなくずっと飛ぶから、
疲れた弱い仲間は、死んでしまうこともある。」
「死んじゃうの?」
「そう。たまには歩いていきたくても、僕らの足は歩くように出来てない。
君たちがうらやましいよ。」

Uちゃんはおどろきました。飛べる鳥が、歩く自分たちをうらやましがるなんて!

 飛ぶもの、歩くもの、泳ぐもの。
どれが一番など、ないのかもしれません。
Uちゃんは、自分の足を見ました。
しっかりと土の上に立っています。
右、左、右と動かせば、Uちゃんは前に進みます。
そうだ、歩いていこう。自分にできるやり方で。

 「みんな、山のふもとはもうすぐだよ。その先に川があるんだって。行こう!」
Uちゃんは、大きな声をかけました。そして、どんどんと歩き始めました。