Uちゃんの冒険 2003/08/21UP

「第15夜」
「白い煙の不思議」

 砂浜が狭くなってきたので、草原を歩くことになりました。
アザラシ君とカワウソさんは、歩くのがあまり得意じゃないので、
カバさんの背中に乗ります。
Uちゃんもカバさんも早く行きたくて、つい、かけっこしました。
「ちょっとちょっと。カバさん、かけっこはやめてよ〜!」
背中のアザラシ君がこわがって言ってます。さわがしくかけっこした間に、小さな山を一つ越えていました。

 山を越えると、川が見えてきました。
その近くにあるという「不思議な湖」は、
白い煙のようなものにじゃまされて、よく見えません。
「ちょっとひと休みしよう。」
さっき山道でかけっこしてしまったせいで、
カバさんは、今ごろになって足が疲れてきたようです。アザラシ君たちは、背中から降りました。

 「ねぇUちゃん。湖が見えないのも、不思議の一つかなあ」
「そうかもしれない。」
「あの煙って、温泉じゃないの?」
「湖の中に温泉?そんなことあるわけないよ、アザラシ君。」
「前に寒い海にいたとき、お母さんが教えてくれたよ。
海の中に温泉が出ているところがあるんだって。」
「Uちゃんも、その話お父さんから聞いたことがある。」
「あの煙が温泉なら、湖は熱くって泳げないぞ。」
カワウソさんが、くもった顔で言いました。

 春になったというのに、湖さえ見えなくなるほどの湯気?
Uちゃんは、やかんがしゅんしゅんと、湯気を立てているようすを考えました。
大きなやかんのような湖。
「うわ〜、どうしよう。やけどしちゃうよ。」
「おーい!みんな、そんなところで座ってどうしたんだ。
あと、湖までもう少しだよ。Uちゃんも、なんでそんなに心配そうな顔をしてるのさ。」
カモメさんにカワウソさんが言いました。。
「さっき湖の近くまで飛んで行っただろ?あの煙はいったいなんだい?」
「やかんみたいに熱〜い湯気なの?」
「温泉なんでしょ、湖は?」
「やけどしちゃう?」
カモメさんは、いっぺんに聞かれてびっくりしました。

 「いっぺんには答えられないよ。
まず、湖は熱いやかんじゃないし、魚もちゃんといた。」
「魚!」
「そう、風に吹かれて魚のにおいがしてきた。それも、とびっきりおいしそうな。」
カワウソさんとアザラシ君は、ごくりとのどを鳴らしました。

 その時、イモ虫さんがこう言いました。
「行けば、みんなわかるじゃない。
そんなに不思議なら、もっと行きたくなった。」
Uちゃんも気づきました。そうです、行ってこそ冒険。こわがっているばかりじゃ、始まりません。やっとみんなは立ち上がりました。確かめてみよう、みんなそう思っていたのです。

 「どんな味の魚だろ?」
アザラシ君たちは、そんな話で夢中でしたけどね。