Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第17夜」
「湖の真ん中へ」

 おどろいたことに、力持ちのカバさんが引っぱってみても、ひもはちっとも動きません。
「お〜い、みんな手伝ってくれ。」
「よし、みんなで一緒に。」
「よいしょ!よいしょ!」
みんなで引っぱりましたが、何かに引っかかっているようです。
「だめだ〜」
もうあきらめようかとみんなが思った時、
びゅーっと強い風が湖から吹きました。
すると、白い煙の中から真っ白い船が出てきて、
Uちゃんたちの所へ近づいてきたのです。

 船はボートぐらいの大きさで、二つのかいもありました。
先の方に、さっき引っぱっていたひもがついています。
「乗っていいかな。」
と言いながら、もうアザラシ君は乗ってしまってます。
Uちゃんもアリさん達と一緒に乗りました。
「カバさんは乗れるかなぁ?」
「ぼくは泳いでいくよ」

 「ドキドキするね」
イモ虫さんがそっと小さな声で言いました。
ひもをほどくと、船はそっと動き出しました。
カバさんは船の横について泳ぎます。
かいをこぐのはUちゃんです。こぐのは二度目なので、うまくなっています。
カモメさんがまわりを見わたして言いました。
「この白い煙は、霧だよ。僕知ってる、寒い朝によく出るんだ。」

 船は霧の中へ入っていきました。
今まで見えていた水面が白くけむって、見えなくなりました。
Uちゃんが横にいたカワウソさんを見ると、かすんでいます。
カバさんは全然見えません。泳ぐ波音が聞こえるだけです。
静かでした。
どこから来たのか、真ん中はどっちだったか、
Uちゃんにはわからなくなりました。
霧はどんどん白く濃くなっていきます。
Uちゃんは、もう自分の手もちゃんと見ることが出来なくなりました。

 「カバさん、どこにいるの?」
「ここだよ」
「どこ?」
泳ぐ音は左側から聞こえてきました。
「あっ、左側だね」
その時、前の方からも同じ音が聞こえてきたのです。
「えっ、どっちなの?」
前から聞こえる音は、大きくなってきました。
泳ぐ音の他に、かいでこぐような音もします。
「何かが近づいてくる!」