Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第18夜」
「花の岸」

 濃い霧の中から見えてきたのは、
白い船でした。
そこに乗っていたのは、
Uちゃんと同じぐらい、びっくりした顔をしている男の子と、
先にとまっているカモメと、カワウソでした。
船同士が近づくと、船の近くを泳いでいるカバも見えました。
 みんなはあんまりびっくりして声も出ず、ただ前を見ています。
向こうも同じように見ているので、まるで鏡を見ているようです。

 「あなたの名前は?」
Uちゃんが聞きました。
「U君。」
「えっ。」
「じゃ、君は?」
「Uちゃん。」
「何で同じなんだよ。」
「私の方が聞きたいわ。」
そのころ、カバさんやカワウソさんたちも、同じ仲間を見て驚いていました。

 「ね、U君はどこから来たの?」
「僕の家から、おにぎりを持って冒険に来たんだよ。」
「私はその後、アリさんにあって・・・」
「同じだ。」
聞いてみると、冒険で起こったことも全部同じでした。
「これも、不思議な湖のせいなのかな。」
「これからどうするの?」
「決めてない。湖の真ん中に何があるのか、見たかっただけだから。」

 その時、もう一度強い風が吹きました。
二つの船は来たのと反対の岸に向かって、ぐっと動きだしました。
風はみるみるうちに霧を追い払い、船を押していきます。

 「あっ、見て。花だ!」
みんなは、見ました。
そこら中の樹に咲いている薄いピンク色の花。
「桜だ。桜だよ。」
たくさんの桜の花は、甘い香りをさせています。本当は湖の魚を少し食べていきたかったカワウソさん達も、思わず岸に上がってしまいました。

 まるで花に「こっちだよ」と誘われたように、みんなはそろって歩き出しました。
桜色で一杯の空を見上げながら歩いていくと、突然、青い空が見えました。
桜の林の真ん中に、大きな丸い原っぱがあります。

 誰かが言いました。
「お腹がすいたよ。あそこに座ろう!」
みんなはまるでピクニックに来たように、
丸い原っぱに丸く座りました。