Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第20夜」
「帰り道」

 Uちゃんたちは、どこに行くかわからない船には乗らず、
湖をぐるっと回って帰ることにしました。

 「来るときは遠かったのに、なんで帰りは近いんだろうね。」
「本当だ、ずいぶん近いよ。もう川が見えてきた。」
リュックから顔を出して、アリさんとイモ虫さんが話しています。
「帰りたい、と思うから足が急ぐのかな。」
「不思議な湖に行くときは、何だかこわかったじゃないか。だから、ゆっくり歩いていたかも。」
「Uちゃんはどう思う。」
「あのね、行くときは知らない場所でしょ。でも、帰るときは知ってるところじゃない?
私、知ってる所はどんどん歩けるもん。」
「ふ〜ん、そうかもね。」

 空を飛んでいたカモメさんが聞きました。
「もうすぐ海だよ。どうする?
僕はひとっ飛びして、アザラシ君のお母さんがいないか見てこようか。」
「もう海なの。そうだった、お母さんが見つかるまでだったね、冒険は。」
「えーっ、もっと冒険したいよ〜。」
アザラシ君は、カバさんの背中で言いました。
「君は海に戻ったら、まだたっぷり冒険が出来るさ。
冷たい北の海で大きなくじらさんと遊んだり、氷の海の下を泳いだり、
暖かい海で、赤や黄色のおいしい魚を追いかけたり。」
「カモメさん、よく知ってるね。」
「いや、僕も他の鳥たちから聞いただけだ。
でも、海には不思議なことがたくさんあると思うよ。」
「いいな〜、海かぁ。」

 歩いていくと、Uちゃんの前に海が見えてきました。
砂浜にうち寄せる波も、今は不思議ではなくなりました。
でも、ず〜っとどこまでも続いている北や南の海には、
見たことも聞いたこともない物がたくさんあるのだと思うと、やっぱりワクワクします。
「いつか、海に冒険に行きたいね。」
「うん、おいでよ。僕が道案内するよ。」
アザラシ君も、にこにこしながら言いました。

 びゅっと飛んできたカモメさんが、
「お〜い、あっちの海にアザラシ君の仲間がいるみたいなんだ、早く行こう!」
と叫びました。

 「お母さんたちかな。」
「とにかく行ってみよう、急いで。ゆっくりしてたらいなくなっちゃうかも。」
「よ〜し、全速力〜っ。」
Uちゃんは、アザラシ君をかかえて走り出しました。