Uちゃんの冒険 2003/08/07UP

 「第22夜」
「何も起こらない日」

 Uちゃんたちは、アザラシ君とさよならしてから、ずっと海辺を歩きました。
Uちゃんは、ときどき海の方を見て、アザラシ君の仲間が見えないかなと思いましたが、もうずっと向こうに行ってしまったのか、見つけることは出来ませんでした。

 そのかわりに海を見ていると、
いろんな生き物がいました。
波打ちぎわで、誰かに怒っているようにハサミをふるカニ。
出てきてはすぐに引っ込む貝。
貝の中から足が出てきて、Uちゃんがびっくりしたヤドカリ。
歩くたびに、ざざっと逃げてしまうフナムシ。でも、また集まる。

 空にはたくさんのカモメたちが飛んでいます。
他にも、たくさんの鳥がいました。
飛んできては、ざぶっと海に飛び込み、じょうずに魚をつかまえます。
Uちゃんは、そのたびに感心して拍手しました。

 その日は、こうして何にも起こらない日でした。
帰りの旅になって初めて、Uちゃんは回りをゆっくり見ながら歩きました。
夜はいつものように、砂浜近くの草むらで寝ました。
もうずいぶん暖かくなったのでカバさんのおなかはいらないはずですが、
やっぱりひっついて寝ました。

 次の日も同じような一日になるはずでした。
お昼ごろになって、Uちゃんたちが下ってきた川が見えたとき、
カモメさんが聞きました。
「川を下るのは、イカダ使ったんだよね。のぼるには、またイカダ作る?」
「イカダではのぼれないよ。むずかしすぎる。」
と、カワウソさんが言いました。
「それならどうするの、歩く?」
「僕たちは川の中を泳いで行く方がいい。」
と、カバさん。
「Uちゃんはどうするの。
一人で山を歩くと、迷子になるよ。ちゃんとした道なんてないんだよ。」
「じゃあ、別の道はないの。遠回りすればいいんでしょ。」
カモメさんが言いました。
「遠回りすると、カバさんやカワウソさんとも、ここでお別れだ。
ね、僕にいい考えがある。みんな、ここで待っててくれないかな。
今日中には戻ってくるから。」
「どこに行くの?」
Uちゃんが聞きました。
「いろんな所さ。うまくいったら、きっとびっくりするよ。」
カモメさんはそう言うと、あっという間に空高く飛んでいきました。

 今日は何かが起こりそうです。
びっくりすることって何でしょう。
みんなは砂浜に座って待ちました。