Uちゃんの冒険 2003/08/21UP

「第25夜」
「空に向かって」

 いよいよ、飛ぶ時が来ました。
Uちゃんはアリさんとイモ虫さんを入れたリュックを背負って、かごに座りました。
「本当に飛ぶのかな。Uちゃん重すぎないかな。」
「大丈夫さ、信じてごらん。」
200羽の鳥たちが口につるをくわえました。カモメさんは、まとめ役と道案内です。

 「今だ、空へ!」
いっせいに鳥たちが羽ばたきます。
ゆっくりと、かごは浮き始めました。その羽ばたきで、風が巻き起こり、その音で何も聞こえません。かごはゆれたかと思うと、ふわっと浮きました。
上へ上へ、みるみるうちに上ります。
下を見ると、カバさんとカワウソさんは小さくなっていました。
「行ってきま〜す。」
手をふりましたが、見えたでしょうか。

 ずいぶん上ったところで、カモメさんが声をかけました。
「さあ、みんな山の方へ行くよ。Uちゃん、ゆれるから気をつけて。」
Uちゃんは、しっかりとかごを両手で持ちました。
かごは一度二度ぐらっとゆれました。
鳥たちに引っ張られ、斜めのまま風の中を飛んでいきます。
顔に強い風があたって、目を開けていられないほどです。

 「Uちゃん、下を見てごらん。カバさんたちが川の中を歩いてる。」
カモメさんが言うので見てみると、下の仲間も山へ向かって出発したようです。
「飛ぶのってすごく早いね。もうすぐ着いちゃうかな。」
「僕らにすれば遅いんだよ。でも、下のみんなよりは早いだろうね。」

 その頃カバさんたちは、川をいっしょうけんめい上っていました。
川底には大きな石があって、ときどき転びそうになります。
カワウソさんは流れの急でないところをうまく選んで泳いでいきましたが、
カバさんは体が大きいのでそうもいきません。
川の水がザブンザブンとぶつかります。
「うわっ」
また、カバさんがよろけました。
「おーい、カワウソさん。」
「どうした、大丈夫か。」
ふりかえって心配そうに見るカワウソさんに、
「僕は、これ以上川の中は歩けそうにない。
岸に上がって、山の中を歩くよ。」
「迷わないかな?」
「できるだけ、川に近いところを歩くつもりだよ。」
「そう。じゃあ山の上で会おう。」
カバさんは、山の中へ入っていきました。