Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第27夜」
「迷いの森」

 森の中はうす暗く、Uちゃんは一人で来なければよかったなと思いました。
でも、誰も代わりはできません。一人でやらなければならないのです。
「カバさーん、どこにいるのー。」
大きな声で呼びます。
森には人が通るような道はありませんでしたが、山の動物たちが使う道がありました。見失わないように、Uちゃんは歩いていきました。

 しばらく行くと、平らな空き地がありました。背の高い草むらがまわりを囲んでいます。
「カバさーん。どこにいるのー。」
呼んだ後で耳をすませたら、何か聞こえます。何の音でしょう?
「カバさーん。」
聞こえたのは、ガサゴソという音でした。ヒュー、ガサゴソ。
「だれっ。」
誰も答えません。ヒュー、ガサゴソ。
答えないけれど、何かがいる。山の中ってお化けいたかな。
「誰なの、出てきて!」
言った後で、しまったと思いました。こわいのが出てきたらどうしよう。
「出てこないで!あっちへ行って!」
でも、相変わらずヒュー、ガサゴソ。
Uちゃんはこわくてこわくて、もう泣き出しそうです。
逃げ出したいけど、でもカバさんはどうしましょう。

 その時、半べそになったUちゃんの足もとから、小さな声がしました。
「どうしたの。泣かないで、わけを話してごらん。」
声をかけたのはネズミさんたちでした。
わけを聞いたネズミさんたちは、こう言いました。
「じゃあ、いっしょに行ってあげる。だから、もう泣かないで。」
50匹はいたでしょうか。力強い仲間がふえました。Uちゃんは涙をふきました。

 左の草むらから音がしていました。
Uちゃんが背伸びをしても向こう側は見えません。一匹のネズミさんが、中に入っていきました。
ヒュー、ガサゴソ。
いったい何の音なんでしょう。
しばらくして出てきたネズミさんは、今にも笑い出しそうな顔をして言いました。
「そっと見てごらん、こわがることなんかなかったんだ。」
「何がいるの?」
「見ればわかるって。」

 Uちゃんはそっと草をかき分けてのぞきました。
そこにいたのは・・・