Uちゃんの冒険 2003/08/11UP

第28夜」
「起きて!」

 そこにいたのは、大きな体を投げ出して眠っているカバさんでした。

 カバさんは歩き疲れて、道の横で一休みしてしまったのでしょう。
カバさんの大きな鼻からヒューと鼻息が出ると、草がゆれてガサゴソ。音の正体はこれだったのです。

 「なーんだ、カバさんかぁ。
こんな所で眠っちゃだめじゃない。」
Uちゃんがほっとして言いましたが、カバさんは起きるようすがありません。
「起きて!夜になっちゃうよ。」
今度は大きな声で言ってみました。でも、だめです。
大きな体をゆすってみました。もっと気持ちよさそうに寝てしまいます。

 「どうしよう。起きないよ。」
「トントン叩いてみたら?」
トントン。起きません。
「こうなったら、僕らの出番だ。」
「どうするの?」
「僕らの歯でかじるんだ。痛くてすぐに起きるね。」
「痛くするの、かわいそうだよ。泣きながら目がさめちゃうじゃない。」
よく寝坊してしまうUちゃんは、自分のことのように考えました。
「えっとね、笑いながら目がさめるほうがいいと思う。」
どうすればいいでしょう。
Uちゃんは、草むらを見て思いつきました。
「そうだ、みんなでカバさんをくすぐろう。」
「くすぐるの?」
「みんなで一本ずつ草を持ってさ、いろんな所をくすぐるの。
きっと、大笑いして起きるよ。」

 そういうわけで、ネズミさんとUちゃんは、
みんなで草を持ってカバさんを囲みました。
「みんな、用意はいい?」
「いいよ。」
「よーし、始め!」
カバさんの大きな鼻の穴や、足の裏、耳、おなか、お尻までいろんな所を
50匹のネズミとUちゃんはくすぐりました。

 「ぎゃははは〜。や、やめてくれ〜。」
カバさんはバチッと目をさましました。
「おはよう!」
「お、おはよう。なんでUちゃんがいるんだ。それにネズミさんたちも。」
カバさんにわけを話して、すぐに出発しようとUちゃんは言いました。
「そうか、ごめんごめん。Uちゃん、背中に乗ってくれ。
それから、ネズミさんたちもよければどうぞ。」
「もちろん、乗せてもらうよ。でも、みんなが乗れるかな。」
50匹はカバさんの背中だけじゃなく、大きな顔や頭の上、
Uちゃんの頭や肩にも、それでも乗れなくてカバさんのしっぽにもぶら下がりました。
「よーし、行くよ。しっぽのみんなも落ちるなよ。」

 それは不思議な姿でした。
知らない誰かが見たら、お化けだと思ったかもしれません。
カバさんは急いで山の上を目指しました。