Uちゃんの冒険 | 2003/08/05UP |
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「第30夜」 「未来」 みんなが目をさました時、蝶さんはリュックにつかまって、きれいに羽根を広げていました。 虹色に光る美しい蝶でした。 「うわー、きれい。」 「ありがとう。でも、もうさよならなんだ。」 「さよなら?なんで。」 「時間がないんだ。もう帰らなくちゃ、ふるさとに。」 「どうして急ぐの。」 「この夏の内に、お嫁さんを見つけなきゃいけないんだ。」 「でも、イモ虫さんのふるさとなら、また会えるね。近くでしょ。」 「会えないかもしれない。僕たち蝶の命は短いんだ、秋まで生きていられたらいい方だよ。」 「そんな。」 「悲しまないで。僕はUちゃんと冒険が出来て本当によかったと思ってるんだから。 あの時君に会わなければ、不思議な湖にも行けなかった。いろんな仲間にも会えた。そしてね、僕が死んでも、僕の子供たちが春には生まれるよ。 もし、子供たちに会ったら、僕のこと、冒険のことを話して。広い世界のことを。」 「子供たち、見たらわかるかな。」 「ああ。きっと僕にそっくりだ。よく覚えておいて、僕のこと。」 「忘れないよ。」 「それだけでいい。 楽しかったよ、君たちに会えて本当によかった。」 そう言ってみんなの顔を見渡すと、蝶さんは広げた羽根をきらきらさせながら、 ゆっくりと舞い上がりました。 「さよなら!」 そこからは、風に乗るようにふるさとの山を目指してまっすぐに飛んでいきました。 「さよなら!忘れない!きっと君の子供たちに会うよ!」 Uちゃんはずっと蝶さんが飛んでいった方を見ていました。 「もう言わなきゃ。」 「そうだね。」 カワウソさんとカバさんが顔を見合わせて、うなずきました。 「Uちゃん、僕たちもそろそろお別れなんだ。」 「えっ。どこに行くの。」 「いっしょに行ってくれるかな。ここからそう遠い所じゃない。」 「行くよ。」 Uちゃんは、アリさんを肩に乗せて、リュックを手に持ってついていきました。 カモメさんもまだいっしょです。 カバさんたちは、川の横を歩きました。しばらく歩くと谷間があり、小さな湖がありました。深い青い色をした美しい湖でした。 「ここが僕たちの家だよ。」 「いっしょに住んでたの?知らなかった。」 「いや、カバさんのことはよく知らなかったんだ。僕は仲間をさがしてあちこちに行ってたし。」 カワウソさんが言いました。 「僕と同じカワウソを見たことがある?僕の仲間はとっても少ないんだ。 だんだんへってるんだよ。大きくなってからは誰にも会ったことがない。」 「そんなにいないの。」 「うん。僕は遠くまで行けば仲間に会えるかもしれないと思ってたんだけどね。」 「そうなの。」 「Uちゃんにお願いがあるんだ。どこに行っても、僕のことを忘れないでいて。 もしも、どこかで仲間を見つけたときは、この湖を教えてほしいんだ。この虹の湖を。」 話すうち、湖の上にさっと雲がかかり、雨を降らせました。お日様に照らされて、雨は虹となりました。 「ああ、だから虹の湖なのね。 わかった、カワウソさんの仲間にあったら、きっと教える。」 「ありがとう。ここでさよならだね。」 「さよなら、忘れない。いろんなことを教えてくれてありがとう。」 「Uちゃん、僕もここでお別れだ。山で僕を起こすとき、笑わせてくれてありがとう。」 「カバさん、さようなら。いつもおなかで寝かせてくれてありがとう。忘れないわ。」 カバさん、カワウソさんは湖に入っていきました。 Uちゃんたちは、そこを離れて隣の山へと歩いていきました。 |