Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第7夜」
「君にしかできないこと」

 「え〜まずこの木の枝だけどね。」
と言いながら、カワウソさんはあっという間に木をかじりました。
「あっ!」
「心配するなって。こうやってかじって長さをそろえるんだよ。
いかだの長さがバラバラだとうまく流れないんだ。」
「よく知ってるね。」
「川にすむカワウソだったら、このくらい常識、常識。
でも、こううまく木をかじるのは僕ぐらいかな。歯が丈夫なんだよ。」

 カワウソさんは全部の長さをそろえると、
「カバさん、そっちから押しといてくれ。」と頼み、
つるを口にくわえて上手に枝をつないでいきました。

 「あとは、水をかく「かい」を作るだけ。」
「 どうやって作るの?」
「平べったい木を、ガシガシと歯で削るんだよ。こうやってね。」
カワウソさんはあっという間に削っていき、
一本の立派な「かい」ができました。

 「すごいな〜」
イモ虫さんはためいき混じりに言いました。
「僕なんか、何にもできない。」
「何もできないはずはないさ。ちゃんとみんなに役目はあるのさ。」
「どんな?」
「君は、さっきみんなを応援してたね。
あの声が届いたから、みんながんばれたと思うよ。
そのほかにもきっと、君にしかできない事ってあるんだ。」
「そうかな〜」
イモ虫さんはまだよくわからなかったようですが、
冒険して一番変わっていくのは、イモ虫さんだったようです。
そして、自分にしかできない事も、ちゃんと見つけたのです。

 さぁ、いかだはできあがりました。
Uちゃん、アリさん、イモ虫さん、カワウソさんは
いかだへ乗り込みました。
カバさんはいかだの横を泳ぐ事になりました。
「かい」を使ってUちゃんがこぎます。
いかだはみんなを乗せて、するすると下流に向かって、海に向かって
流れ出しました。