Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第8夜」
「いかだの上で」

 いかだは、川の上をどんどん流れていきます。
Uちゃんは、「かい」を使わなくてもいいくらいです。
カバさんも急いで泳がなければなりません。

 Uちゃん、カワウソさんは、いかだのつるをしっかりにぎっています。
おや、Uちゃんの背中のリュックが騒がしいようです。
「きゃー!うわ〜っ!」
いかだがゆれるたびにリュックの中にいるアリさん、イモ虫さんは
ごろんごろんと上や下へゆれているのです。
「だいじょうぶ?」
「目がまわるよ〜!」
「もう少ししたら、流れはゆるくなるから。それまでのしんぼうだ。」

 やがて、カワウソさんが言ったとおり、
Uちゃんたちもつかまらずに乗っていられるほどの早さになりました。
そうなると、初めてゆっくりと回りの景色も眺められます。
左右には野原が広がっていました。
一面茶色の土の上に、緑色の煙のように見えるのは、芽吹き始めた草です。

 「ああ。何だろう、このにおいは?」
イモ虫さんがリュックの中から出てきて言いました。
「何だかワクワクするにおいだね」
アリさんも目を輝かせて言いました。
カワウソさんが教えてくれました。
「春のにおいだよ。そうか、君たちには生まれて初めての春なんだ。」
「春!春!」
アリさんたちはUちゃんの肩の上で、ぴょんぴょんはねて喜んでいました。