Uちゃんの冒険 2003/08/05UP

「第9夜」
「いかだを下りて」

 ようやくUちゃんの「かい」が役に立ちます。
動くいかだの上に立ってこぐのは、なかなかむずかしいです。うまくいかないので、
右に行ったり左に曲がったりしながら、いかだは流れていきます。

 そして、流れは歩くのと変わらないくらいの早さになりました。
「そろそろ、僕が引っぱった方がいいかな。
カワウソさんがいかだにつけてくれた、そこの長いつるをくれないか。」
カバさんはつるをくわえて、いかだの前を歩いていきます。
「重くない?」
「軽いよ、君たちぐらいは葉っぱぐらいの重さだよ。」
「カバさん、力持ち〜!」

 さわやかな風が吹きます。
「春風だねー」
「へえ、これが春風か。かすかに花のにおいがするみたい。」
「ははは、まだ早いだろ、花が咲くには」
カワウソさんとアリさんたちが、にぎやかに話しています。
みんな何だか、うきうきしています。

 「よいしょ、よいしょ」
「ふ〜う」
カバさんのかけ声がつらそうになってきました。
「どうしたの、カバさん。」
Uちゃんが声をかけました。
「何だか、君たちが重くなってきたみたいなんだ。」
「えっ、重くなった?」
「いやいや、川の水が減ってきたから、いかだが動きにくくなったのさ。」
カワウソさんが答えました。
「もうそろそろ、いかだを下りたほうがいい、でないとひっくり返る。
カバさん、岸の方へ引っ張ってくれ。」
Uちゃんも下りて引っ張りました。
やわらかい土に、いかだはずぶずぶと乗り上げて止まりました。

 「このいかだ、どうするの、じゃまにならないかな。」
「じゃまにはならない。木の枝は誰かの家になるかもしれないし、
つるは鳥たちの巣の材料になるさ。」
「もう少し歩く?それとも、おにぎり食べる?」
みんなはいっせいに叫びました。
「おにぎり〜!」